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銀影あゆの釣りライフ 鮎釣り行脚2013

『釣りと自分』・・・遠い記憶 3

『あんま釣りでも鮎が釣れたんだからねー。凄い時代だったのかな』

 

『あんま釣りって何?』

 

『あぁ。こう?うーーんなんて言うのかな。6尺位の竿っていうか、

棒でもいいんだけどね、釣りだから竿か。まぁいいや。とにかく、

その先に少し竿より短めに糸を付けて、針とがん玉は流れと魚次第だね。』

 

『餌はさぁ、川虫。難しい仕掛けよりも、動作が大事なんだよね。

 こう、アクションっていうのかな?』

 

渓太は立ち上がって、中腰で竿の様に持った割り箸で押したり、引いたりして見せた。

 

『こうやって誘うんだよね。あと、重要なのは足元の石を静かに動かして、

 魚を集めるんだよね』

 

『石と魚と何か関係があるの?』

 

竿でも棒でもいいなんて言う釣りや、あの変な動きで釣っている人間を

川で見たことの無い僕は当惑していた。

 

『石に付いている川虫を剥がして、撒き餌さみたいにするんだよね

 意外と腕の差?足の差が出るんだよね ハハハ

 これで鮎が1日に30匹や50匹釣れたんだからねー』

 

近頃、仕事のつまらない話ばかりしていた僕らは、久しぶりに渓太の

笑った顔を見た。

年明けの新年会の時期だというのに、今年は随分と暇で、店内にはもういくらもお客さんは残っていなかった。

いつか自分の店を持つんだったら、こんな店にしたいと思って始めた10数年前と、今ではすっかり違ってしまった。

一番置きたくないと思っていたテレビから、近頃一段と酷くなった、くだらなくて、うるさいお笑い番組をなんとなく流していた。

ちらっと見た視線を彼も分かったのか、

 

『最近では時間に関係なくこんな番組をやっているんだね』

 

二人とも少しうつむきながら苦笑いをした。



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